しゅでん日記!―支線― 第10話「マラソンで重要なのはペース配分」 【7月】

【7月の水曜日】

眠っていた俺は突然顔を叩かれた。
「ねぇ、起きて。」
「……なんだ、クロガネ、まだ眠いんだが。外もまだ暗いんだし、もうちょっと寝かせてくれや。」
すると、クロガネのまわりがビリビリし始めた。
「ちっ、起きなさいよ、あんた。」
「はい!起きまっす!」
そう言って、俺は飛び起きた。
「で、なんだ?」
「ケチャップが欲しい。」
「お前はごはん欲しさに起こすペットか!!」

「ちっ、エネルギーを摂らないと、また倒れるわよ、水曜日の深夜0時にタイムトラベルしたんだから。」
そうだった。俺たちは、突然現れ俺を殺そうとした電車人間との戦いで、クロガネが電撃で破壊した
校舎を元に戻すために
時間を戻ったのであった。だからなのか、昨日倒れているクロガネを見つけて、意識を失なった場所で
眠っていた。
しかし、戻る時の記憶がはっきりしていないのでタイムトラベルをしたのか半信半疑だったが、冷蔵庫の
扉を開けてみると、
まったく同じ場所にケチャップが置かれていたので、俺は確信した。
このケチャップをクロガネに渡すと、吸い始めた。
ここで、俺は疑問に思ったことがあったので、ケチャップ吸飲中のクロガネに投げかけた。
「聞きたいことがあるんだが、今が本当に水曜日の深夜0時だとすると、お前はまだ気を失ってる
最中なんじゃないか?」
「あの電車人間と戦った後タイムトラベルで水曜日の深夜0時に戻って来た時、タイムトラベルする前の
水曜日の朝に食べたケチャップのエネルギーがまだ残ってたから、私は立っていられる。
でも、タイムトラベルで私はエネルギーを使ってしまったため、早く補給をしないとだめな状況だった。」
「いったいどれくらいのエネルギーを使ったんだ?時間を操るくらいだから、すごいだろうよぉ?」
「そうね、100キロカロリーくらい。」
「少ねぇなおい!!」

「さて、食べ終わったところで、どう電車人間を仲間に加えていくのか、考えて。」
「俺が考えるのか!?人ごみの中に居ればいいだけじゃなかったのか!?」
「あんたの役回りとしては確かにその通り。でも、それだけで主人公名乗るとか、世の中甘すぎ。
だから、知恵出しなさいよ。」
「んなこと言われたってよ、俺、なんの変哲もないただの男子高校生なんだけど。」
「ちっ、人生の主人公の座から引きずり落とすわよ。」
「考えますっ!」

「そうだな、俺はとりあえず普通に歩きまわって電車人間さがすわ。」
「ちっ(怒)」
「待て待て待て待て!俺の話を最後まで聞けぃ!!
だが、街中とかを適当に歩いたところで電車人間に遭遇する可能性は低い。
しかし、俺の学校の中を歩き通せば、電車人間に遭遇する可能性が高いかもしれねぇ。
じゃあなぜ俺の周りなのか?
そんなの決まってらぁ、それは……そういう輩は主人公の周りにいるもんだからだ!!」
「なるほど、一理あるわ。」
「えっ!?納得!?俺、冗談で言ったんだけど!?」
「あんたがいるあの学校に電車人間が一人居た時点で、もう少し探してみる価値はあるかもしれない。」
「いや、無理言うなよ、あの学校、数千人いるんだからその中から探すなんて、無茶だぞ?」
「仮に、学校の中に複数人電車人間がいたら、確率はかなりあがるはずよ。
じゃあこれからしばらく、学校内を探しなさい。
特に、征服とか言ってる奴がいたらマークしておいてよ。」
「そんなこと言ってるやつ聞いたこと無いわ!!」

その後、俺は朝までもう一度寝た。
そして朝になり、時間通りに家を出ようとした時、クロガネが俺に話しかけてきた。
「一つ忘れていたことがある。今、私たちの体は周りの人間に比べて9時間ほど先を行ってる。」
「9時間、周りより歳を取ってるっつーことだろ?」
「このずれをなくす対策をやらないといけない。」
「対策?つーか、別に9時間ぐらいでなにも変わんねぇだろう?」
「確かにそうかもしれないわ。
でも、これから先何度も繰り返していった時、いずれ大きなずれが生じて、なにか不測な事態が
起こるかもしれない。
それを防ぐために、今のうちにずれを修正する。」
「修正なんてこと、できんのか?」
「やったことないから本当に出来るのか分からないけど、方法はある。
それは、休止状態にする。」
「は?休止状態?」
「そう。まぁこれは電車の話になるけれど、電車って言うのは定期的に検査を受けるの。
それは主に年数で決まっているけれど、その車両を休止、まぁ休車って言うんだけど、つまりは
一切使わない期間を設けると、その分検査期限は延長されるの。要は、休止した分は老朽化して
いないということ。これを、あんたに応用する。」
「応用って、だいたい休止状態ってどうするんだよ。」
「一切活動しないようにする。つまり、気絶してればいい。」
「は?ちょっと待て、活動って、生命活動はどうなんだ?」
「……そういうわけで、気絶しなさい。」
「おい!一番重要なところを誤魔化すな!!」
「ちっ、やってみないとどうなるかわからない。まぁ、どうにかなった時はご愁傷さまということで。」
「ふざけんなよ!!」
「さて、どう気絶させるかだけど、」
「なに勝手に話進めてんの!?俺の意見は反映されないの!?俺、言わばお前の運転士だよな!?
運転士の命令で電車は動くんだよな!?」
「ちっ(怒)」
俺は電撃をくらった。さらにクロガネは電撃を放とうとしている。
「あぁぁぁーーー!嘘です!やりますから!ちゃんとやりますから追撃はご勘弁を!!」

「さて、あんたを気絶させる方法だけど、自分で考えて。」
「なんでそこは考えねぇんだよ!!」
「だって、あんたは言わばサトシ君状態だから、もう私の電撃をくらっても気絶をしない。
もう私にはどうにもできない。だから自分で気絶する最適な方法を考えて。」
「つーか、俺これから学校なんだが。」
「じゃあ学校で気絶してれば。」
「学校で気絶って、即救急車呼ばれ……
あ……俺のクラス担任は救急車呼ばないはずだし、そもそもその先生が俺を気絶させることが……。」
「じゃあその先生で気絶ということで決定で。行ってらっしゃい。」
「おいおい、マジでやるのかよぉ……。」
そして俺は足取り重く、数時間先の学校を目指すため、家を出た。
家を出発間際にクロガネに引きとめられてしまったため、だいぶ遅れていたが、学校にはチャイムが
鳴る直前というギリギリで到着した。校舎に入り、自分のクラスを目指していると、やつが現れた。
やつというのは……。
「あれぇ〜?生徒会役員がこんなギリギリに登校してくるだなんて君、役員として自覚あるのかなぁ〜?
いや、無いよねぇ〜、だって生徒である僕に攻撃をしたんだからねぇ〜。」
そう、タイムトラベルする前の水曜日に学校で戦った電車人間だったのである。
「おいおい、そんな驚いた顔しなくてもいいじゃないかねぇ〜?」
「て、てめぇ、覚えてんのか?ゴホッゴホッ、つーかあんまり近くに寄るな。」
「そうだねぇ〜、覚えてるから君にこんなことを言ってるんだけどねぇ〜。
ま、てっきり僕も記憶をなかったことにされると思ってたから、予想外の展開だけど、むしろこっちの
方が好都合なんだよねぇ〜。記憶が無ければ再び君を襲ってたところだったけど、記憶がある、つまり
今の自分は君たちに叶わないっていう学習ができたから、今後、万全の状態で君たちを逝かせることが
できちゃうってわけなんだよねぇ〜。
時間が戻ったおかげで、体はピンピンの状態に戻ったしねぇ〜。まぁ、痛みはまだ残ってるけどねぇ〜。」
「あ、やべぇ、忘れてた。」
「なにをだぁ〜い?」
「いや、お前という脅威がこの学校に居るっつーことをすっかり忘れてた。
だってお前、あんなあっさり負けちゃうしよぉ。」
「わ、わ、忘れてた、だとぉ!?この僕を!?
やっぱり、今やっちゃおうかなぁ〜、常盤鉄みたいに一撃でやっちゃおうかなぁ〜。」
「あのさ、悪ぃんだけど、もうチャイム鳴るからあとにしてくんねぇか。」
「へぇ〜僕よりもチャイムを優先しちゃうんだぁ〜、いいよ、あとで、」
「じゃ。」
「ってまだ僕言ってる最中なんだよねぇ〜!」
素で忘れていたが、今のあいつに戦う意思はないようなので、よしとしよう。
クラスへ向かう途中、成東亜美、由美と出くわしたが、チャイムが鳴る5秒前だったからかすれ違う
だけだった。

チャイムが鳴ると同時に教室に入った俺。さらに同時に担任の白岡先生が入ってきた。
さて、気絶をするために怒らせる内容は登校中に考えてはきたものの、実行するには勇気が……。
そんなことを考えていると、白岡先生は俺に号令をかけるように言ってきた。
もう時間は無い。ここで引き下がったらクロガネに電撃をお見舞いさせられることになるだろう。
だから俺は決断した、白岡先生を怒らせ、気絶しようと。
俺は号令で考えてきた内容の通りにしたところ、予想通り怒り狂った先生。
その後、何かが俺の所に投げ飛ばされてきた気がするが、このあたりの記憶は不確かなので、
割愛させていただこう。

次に俺が目を覚ました時、すでに放課後で、そこには成東亜美、由美がいた。
俺が毎週水曜日朝の生徒会定例会議に欠席したこと、さらに放課後の生徒会活動に遅刻したことに
ついて罰を受けると言うことで
生徒会室に強制連行された。そして、昨日に引き続き、自分の目がおかしくなったのかと錯覚させる
ほど青々しいオムライスを食べさせられた。
味はいいのに、色で台無しであった。
そして、その日の生徒会活動が終わり、学校を後にした。
少し歩くと、またやつが現れた。
「いやぁ〜こんな遅くまで、ほんと御苦労さまだねぇ〜、生徒会役員さん。」
「だからあんまり近寄るな、ゴホッゴホッ。
つーかなにお前、俺が終わるまでここで待ち伏せしてたのか?ストーカーで訴えるぞコノヤロー。」
「心外だなぁ〜、用心棒を犯罪者扱いするだなんてねぇ〜?」
「は?なに言ってんだお前?黄色い救急車呼ぶか?」
「そのまんまのいみさ、君たちは僕の獲物。僕が君たちを倒せるようになるまでに死んじゃったらこの
僕が困っちゃうんだよねぇ〜。
獲物は他の誰かに先取りされないよう守らないとねぇ〜。
だからさぁ〜、それまでは僕は君たちの味方さぁ〜、それまでは。
そういうわけだから、僕が戦いをしかける前にやりにこないでねぇ〜。」
そういうと、やつは夜の闇に消えていった。

【7月の木曜日】

朝、今日も学校だ……。
「どうしたの、いつもよりテンションが低い気がするけど。」
「いやぁ……食堂5パーオフが夏休み明けから廃止になることが昨日の生徒会で決まってな……。」
「校舎を壊したり日ごろの行いが悪いからよ。」
「お前が言うな!!」

【7月の金曜日】

木曜日はもう終わりなのか!?
……まぁいいや。

今日行けばしばらく続いた学校生活とはおさらばできる。週の終わりだからでは無く、明日から
夏休みだからである。
いつも通り学校に行くために朝起きたが、クロガネは目を覚まさなかった。
昨日、クロガネから事前に聞いた話によると、電車は年がら年中走っているわけでわなく、走らない
日だってあるとのこと。
そういうわけで、今日は全く縛りの無い一日なので、俺は学校の友人と昼飯を食いに行った。
そして、その後は普通に帰ってくるはずだった。
だがしかし、俺は今、学校に居る。しかも生徒会室の中だ。なぜか。それは俺が食った昼飯について
成東亜美・由美に文句を言いたいためである。
「文句だなんて失礼しちゃうわねぇ。」
「はい、そうですね。」
「どっちが失礼だコラッ!!
なんなんだよ!マクドナルトウって!!なんであんなに青々しい物が出てくるんだよ!!」
「あら、いいじゃないの、暑い夏に青々しくてねぇ。」
「毒々しいわ!!これ、体に害は無いんだろうな!?」
「ふふ、無いと言えば無いわね。」
「あるのかよ!?なんだ!?どんな害だ!?」
「これで自分を見てみるといいと思いますよ。」
そう言って由美が俺に手鏡を渡してきたので、それで自分の姿を見ると、髪も瞳も青くなっていた。
「青い……だと!?
つーかどうしてくれんだよ!!この色!!」
「どうもこうも、普通にお風呂で洗い流せば落ちるわよ。目の色も一緒にね。」
「食べ物から取り込んで体内から青くなったのになんで髪洗うだけで色が落ちるんだよ!
どんな理屈だよ!!」
「まぁ、少しは落ち着きなさいよ。ほら、これをあなたにプレゼントするから。」
「ん?なんだこれ?」
「マクドナルトウ1年分無料券です!」
「うをぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!恩にきるぜぇぇぇぇぇーーーーー!!」
そしてその後、帰宅したがクロガネは朝と変わらず寝ていて、結局その日は一度も目を覚まさなかった。

【7月の土曜日】

そして、今日から夏休み。
「つーか木曜日からどんだけ省略してんだよ!?」
「作者がペース配分間違えたんだからしょうがない。」
「なんてことを言うんだお前は!!」
「だいたい、1週間分を3話に集約してるからって、律義に7日分やらなくたっていいのに。」
「それ以上言うな!」

【7月の日曜日】

省略されすぎた結果、すでに日曜日。
暇な俺は適当に自分の部屋でゲームをしていた。すると、部屋にクロガネが入ってきて俺に
話しかけてきた。
「遊んでいるようだけど、電車人間探しはどうなってるの。」
「アホか、んなとんとん拍子に行くわけねぇだろうがよぉ。
だいたい、金曜日丸一日寝てたやつが言うな。」
「だから言ったでしょ、電車は年がら年中走っていられらないの。時には丸一日走らない日だって
普通にあるの。」
「あぁそはいはい。ま、とにかく俺は学校で気長に探してんだから、お前も気長に待ちやがれ。」
「夏休みって、学校行くの?」
「毎日じゃねぇが、生徒会の集まりで行く日もある。まぁ、来たって生徒会のあの二人以外
誰もいねぇがな。」
もちろん部活動はやってるが、これを言うと学校に行くとか言いかねねぇから俺はうそをついた。
「ちなみに、学校に行く日以外はどうするの。」
「……じ、自宅待機……かな?」
「ちっ(怒)」
4日ぶりの電撃は、体に効いた。あぁ、夏休みの間、俺はどれだけの電撃を受けることになるのだろう。
考えるだけで体が痺れてくる……。

第18話へ続く

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