しゅでん日記!―本線― プロローグ「面接!」
「バ、バイトの面接、緊張してきた……。」 彼は京浜高等学校2年生の大川大河(おおかわ たいが)である。 彼は高校生のうちに社会経験をしておきたいと思い、また、両親が仕事で長期不在で、仕送りが あるものの最近金欠気味なので、アルバイトを始めようと思っていた。 数日前、どのようなアルバイトを始めようか街中を歩いて探していた時、駅前のレストランに貼られて いた一枚の求人広告に目が止まった。 --急募!!時給3000円!!-- 金欠でもあった彼はここのレストランでアルバイトをしようと思い。すぐさま広告に掲載されていた 電話番号に電話をかけ、面接の約束を取り付けた。 そして、今日、そのレストランのアルバイトの面接が行われる。 もう間もなく約束の時間を迎えるところだが、緊張した彼は中に入れずに入口の前で立ち止まっていた。 「ど、どうしよう……も、もう時間がない!……腹を括って入るしかない!」 そして、ふるえる手で扉の取っ手に手を延ばし、扉を開けようとした瞬間、突然扉が開き彼に当たった。 「あ痛っ!」 開き戸でありながら自動扉であった。 「なんなのこの扉!?なんで人の立ってる方に開くの!?「押」って書いてあるじゃん!!」 取り乱しながらも店内に入った彼だったが、あたりに店員の姿は見えなかった。 「あれ?誰もいないなぁ……。」 辺りを見回していると、後ろから肩を叩かれ声をかけられた。 「もしかして、大川大河さんですか?」 突然のことに驚いた大河は、すぐに振り返り間髪いれずに勢いよく自己紹介をした。 「は、はじめまして、大川大河です!よろしくお願いします!」 「はい、はじめまして。今回面接を担当する、白岡勇樹(しらおか ゆうき)です。」 冷静になり白岡を見た大河は、固まった。なぜなら白岡は、“渦巻きメガネ”をかけ、“サンタのような 白いひげ”をつけ、背中には“白い羽”を生やし、“天使が来ているような白いガウン”を身にまとった 姿でいたからである。 「どうかされましたか?」 「……ここは仮装パーティーですか!!」 「すみません、実は大川さんの緊張を和らげてあげたいと思いまして。あ、ちなみにこの羽、飛べるんですよ。」 「飛べちゃうんですか!?」 白岡が手に持ったボタンを押すと、白岡の背中から羽が分離し、羽だけが羽ばたいていった。 「あの羽はあなたの緊張を載せて羽ばたいていったのですね。」 「別の意味で緊張が舞いおりてきたんですけど!」 この店で働いて大丈夫なのかと本気で思った大河であった。 「さて、和んだところで面接を始めましょうか。では、こちらへお座りください。」 白岡は大河に、4人がけのテーブル席に座るよう指示をした。 「はい、失礼します。」 そう言って大河が席に着くと、白岡は大河の向かい側では無く、すぐ隣に座った。 「それでは面接を始めます。」 「なんで隣に座るんですか!僕は一体誰と面接をするんですか!!」 「私とではないんですか?」 「ですよねっ!!だったらまともに面接をやってください!お願いします!!」 そして、白岡は大河の向かいの席に座りなおした。 「さて、それでは気を取り直しまして……」 ピンポーン。 「ご注文、お決まりですか?」 「私は、これ、お願いします。大川さんは?」 「面接でお願いします!」 1分ほど経つと、白岡の注文したものが運ばれてきた。 「それでは面接を始めます。」 「顔見えないんですけど!僕はパフェと面接するんですか!!っていうか何なんですかその超巨大なパフェは!!!」 「あ、もしかしておおかわさんも食べたかったのでしょうか?このお店の隠れメニュー“スカイ○リーパフェ”を。」 「特にいいです!!」 「それではまず一つ、質問しますね。」 「本当にこれで始めちゃうんですか!!」 「まず、このバイトをどこで知ってしまったのでしょうか?」 「なんで知られたくなかった、みたいな言い方なんですか!!」 「では、次の質問です。」 「え!?まだ僕答えてないんですけど!?」 「このバイトの志望動機を、目を閉じて心の中で語ってください。」 「なぜに心の中で!?」 つっこみを入れつつも、目を閉じ、心の中で志望動機を語り始めた。その最中、ふと目を開けると、白岡はパフェを食べていた。 「パフェ食べたかっただけかぃぃぃl!!」 大河はつっこみまで心のなかで行った。 白岡のパフェ食べ進行状況を薄目を開け確認し続けること10分、白岡は完食した。 「あの……志望動機、語り終わりましたけど?」 「大川さん、いつ死んだの?」 「今でしょ!じゃなくて!」 すると、店内で拍手が沸き起こった。 「えぇぇぇぇ!?なに!?なんなのこれ!?」 店内、皆、スタンディングオベーション! 「おめでとうございます、大川さん。見事採用です。」 店内、皆、スタンディングオベーション!! 「一芸入試!?いや、まぁ芸にはなってないけど……。」 店内、皆、スタンディングオベーション!!! 「よく頑張りましたね。」 すると、店内にいる全員で大河を胴上げし始めた。 「なんでこうなるの!!なんか恥ずかしいっ!!……でも、嬉しく無くは無いかな!」 こうして、この物語の主人公、大川大河は無事、アルバイトに就くことができたのであった。 と、ここで、誰かの電話が鳴った。白岡のものだったようだ。 「はい、白岡です。……どうも、いつもお世話に、はい?今ですか?今はバイトさんの面接中ですよ? そちらに伝えてありますよね?……はい?あ、そうでしたか、失礼しました。……えぇ、はい、はい、わかりました。 では失礼します。」 電話を切った白岡は、胴上げされ喜びに浸っている大河に向かいこう言った。 「私が面接日を間違えてしまっていたようなので、今日のことは全て無かったことでお願いします。」 「……え?…………え??………………えぇぇぇぇぇぇーーーーーー!?」 一転し、主人公、大河はアルバイトに未だ就けずとなってしまったのであった。 ちなみに後日、今回とまったく同じやり取りを行った末、今度は無事、採用になったのであった。 第1話へ続く |
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