しゅでん日記!―本線― 第3話「学校!」 【7月の水曜日】

朝、大河がいつも通り学校へ向かっていると、今日も神山と合流して一緒に登校していた。
学校の門前に到着し、そのまま中に入ると、大河と神山は二人の女子生徒に止められた。
「あなたたち、2年A組の神山紗耶香と大河大川よね?」
「ええ、そうよ。」
「姓と名の順番が入れ替わってるのを無視すれば、そうです。」
「そう、じゃああなたたち、生徒会室に来なさい。話があるから。」
「では、こちらへお願いしいます。」
そして、二人は生徒会室まで連れて行かれた。そして部屋に入ると女子生徒二人はすぐに喋り始めた。
「ここへ連れてこられたのだから、勘付いているとは思うけれど、私はこの京浜高等学校の
生徒会長、成東亜美よ。」
「私は副会長兼書記兼会計の成東由美です。」
「なによ今さら。となりのクラスなんだからそんなの皆知ってるわよ。」
「いや!読者は知らないから!」

「さて、さっそく本題に入らさせてもらうわ。
あなたたち、駅でアルバイトしているそうだけれども、一体誰の許可を得てアルバイトをしているの
かしらねぇ?」
「許可?」
「許可って、なんのことかしら?この学校はアルバイトをやるのに許可はいらなかったはずよ。」
「あらぁ?神山紗耶香、あなた一体いつの話をしているのかしら?」
「今年度から校則が変わったんですよ。」
「え!?そうだったの!?僕、全然見て無かったや……。」
「私も見てないわ。
で、今から許可を得ればいいのかしら?」
「そうねぇ、確かに早急に許可を得るのは当然のことね。でも、今まで許可を得ずにやっていた分は
どうなると思う?」
「罰則があるなら言いなさいよ。校則が変わったのを知らなかった私に過失があるんだから、罰は
受けるわよ。」
「すんなり罰を受け入れてくれて助かるわ、神山紗耶香。あなたには罰則を科すわ。」
「あれ?僕は??」
「それでは、神山さんに科す罰を亜美ちゃんから発表します!」
「僕、もしかして、無視されてる?いないことにされてる!?」
「あなたに科す罰、それわねぇ……ふふ
……その口調を今すぐにやめることよ!神山紗耶香!」
「えぇぇ!?なに!?その罰!?」

「なんで口調を変えないといけないのかしら。納得できる理由があるなら受け入れるわ。」
「理由?そんなの単純よ。私と口調が被っているから。ただそれだけよ。」
「口調被りなんて気にしていたら、ほとんどのキャラクターが個性的すぎる口調で喋ることになるわよ。」
「あら、いいじゃないの。そうすれば神山紗耶香、あなたのキャラが立つかもしれないわよ。
まぁこの私には叶わないと思うけれどね。
あ、そうだわ、どうせならこの私があなたにお似合いの口調を私が作ってあげようかしら?
そうね、そうだわ、そうしましょうよ!
あなたにお似合いの口調はねぇ……“亜美ちゃんカワイイ!!”でいいじゃない!」
この発言に大河と神山は引いた。
「……え。」
「……さすがに引いたわ。」
「ふふ、冗談よ。だって、あなたに言われなくったって、私がカワイイことくらい知っているもの。」
「それじゃあ、次は私が口調を考えますね。
えーっとですね、神山さんにぴったりの口調は……………………………………。」
「無理にボケようとしなくていいから!!」

突然、亜美が外を見だし、大河と神山の二人にこの件はこれで終わりだから教室へ戻るようにと告げた。
しかし、この二人からすればまだ話が終わっていないため、神山は亜美に反論した。
「亜美、勝手に連れてきておきながら、結局何もしないで追い返すって、どういうことよ。」
「いや!!なんでそんなに罰を受けたがってんの!?」
「私だって本当は受けたくないわよ。でも、校則を見逃した過失があるのは事実。だから、罰を
受けるのは当然のことよ。」
「いや、そこまで真面目にしなくても……。」
「あらぁ?私がいつ、あなたたちが校則に反したなんて言ったかしら?」
亜美のその発言に、二人は驚きを隠せなかった。
「え!?なに!?どういうこと!?」
「説明しなさいよ、亜美。」
「ふふ、暇つぶしに遊んであげていただけよ。」
「要するに、い・や・が・や・せ、です!」
「いや!そんな世界的なスポーツイベントの誘致プレゼンみたいなこと言われても納得できないよ!!」
「あ、あきれたわ。行くわよ、大河。」
二人は生徒会室を後にした。
「さて、由美ちゃん、行くわよ。」
「はい、亜美ちゃん、お仕置きですね。」
二人が部屋を出た後、すぐにこの二人も生徒会室を出て、どこかへと行った。

ところかわり、大河、神山、虎鉄が属する2年A組の朝のホームルーム。
号令を行うのは学級委員長の虎鉄道馬。
「起立、礼、おはようございます。」
やるきのない掛け声をした虎鉄に対し、担任の白岡深雪先生は注意をした。
「虎鉄くんさん、朝なのでもっと元気にお願いしますです!」
「先生ー、俺たちは先生みたいなちっちゃなガキと違って、朝だからってテンションあがったりしねぇんですよ、むしろダダ下がりっつーか。」
そう虎鉄が発言すると、先生の態度も口調も一変した。
「あぁ?虎鉄、今なんつったぁ?」
「だいたいよぉ、こんなちっちゃなガキの先生はもうベッキーで十分なんだよ。
んなにちっちゃなガキの先生やりたいなら、千和でも呼んできやがれ、クソガキ。」
この言葉に、深雪先生の怒りが頂点に達した。そして、深雪先生の立っている所にある教壇、
とは逆にある黒板を虎鉄に向け投げ飛ばした。
そしてそれは虎鉄に直撃し、そのまま意識を失った。
そんな虎鉄を無視して、深雪先生はホームルームを再開させた。そして、ホームルームが終わったが、
虎鉄は意識を失っているままだった。

1時間目の授業が始まったが、虎鉄の意識は戻らない。
2時間目の授業が終わったが、やはり意識は戻らない。
3時間目の授業が終わり、昼休みになったところで大河が声をかけるが、返事が無い、ただのしかば(略)
4時間目は移動教室。意識が戻らない虎鉄は教室に放置。
5時間目は再びA組で授業だが、一向に意識は戻らない。
6時間目が終わり、ホームルームも終わったところで再び大河が声をかけるも、意識が戻ることは無かった。

A組の教室から虎鉄以外誰も居なくなった頃、亜美と由美が教室に入って行った。
「深雪ちゃん、また今回も派手にやったようね。」
「聞いた話によると、朝からこの状態のようですけど、大丈夫なんでしょうか?」
「そうね、黒板の重さで圧死してるかも知れないわね。」
「どうします?これじゃあ生徒会の会議が成り立ちませんけど?」
「まぁ、正直なところ、この人の懸りは会計係と対になるように設定した運計係だから、ネタ以外に
存在意義はないからねぇ。
でも、全員そろわずに会議をするって言うのも、生徒会としてどうなのかしらねぇ。」
「私が書記と会計と副会長を兼ねてる時点で、どうなんでしょう?」
「あら、なんかいいわねぇ、“書記と会計と副会長”って、ライトノベルにありそうでねぇ。
いっそのこと、私たちメインで物語始めちゃおうかしら?
そうね、そうだわ、そうしましょうよ!」

新作品タイトル【焼物語(ヤキモノガタリ)】
「ねぇ、ハララミくん、早くその目を開けなさい。今すぐに開けないとあなたを焼くわよ、網の間をすり
抜けるぐらいまで焼くわよ。」
「誰がハララミくんだぁぁぁぁーーーー!!」
亜美がボケると、虎鉄が飛び起きそうつっこんだ。

「ふふ、さすがはつっこみキャラね。ボケをそのまま放置し置かないだなんてね。」
「……あぁ、なんだ、成東姉妹か。」
「成東姉妹ですって?なによその呼び方、今すぐ訂正しなさい。さもないと焦がすわよ。」
「間違ったこと言ってねぇだろうが!」
「間違っているどうかは問題じゃないのよ。
単に、こんな妹とセットみたいに言われるの、嫌なの。」
「私もこんな姉とセットみたいな言われ方されるのは嫌なんです。」
「だって、こんな完璧な妹と、」
「こんな完璧な姉とを、」
「合わせたら一つになっちゃうじゃないのよ。一つよりも二つ。」
「良いものは多い方がいいんです。」
「あぁはいはい、わかったよ、わかりましたよぉーっと。」

「そういや、なんでお前らここに居るんだ?誰かに言われて来りとかか?」
「なんでこの私が誰かの指図を受けてあなたの所に来ないといけないのよ。
私は会議に参加しないあんたを連行しにきたんだから。」
「でも、驚きましたよ。深雪ちゃんが
“虎鉄くんさんは、謎の引力で落ちた黒板の重さに潰されているのです!”
と聞いた時は。」
「んなこと言ってたの!?俺も驚き!」

「さて、毎週水曜日の定例朝会議欠席と、放課後の生徒会活動に遅れた罰を科してあげるから、生徒会室に来なさい。」
そう言って、虎鉄は生徒会室に連行された。

「さぁ、罰として、これを味見しなさい!」
テーブルに出された皿の上に盛られていたのは、青々しい木の葉形の謎の食べ物で、その上には
青い液体がかけられていた。
「え、ちょ、なにこれ……。」
「なにって、」
「どうみてもオムライスじゃないですか!」
「いや、どうみてもオムライスじゃない。俺の知ってるオムライスはもっと黄色だし、ケチャップも赤だ。」
「はぁあ、常識という枠に囚われた人間にだけはなりたくはないわね。」
「はい!そうですね!」
「お前らに言われたかねぇーよ!!」

30分後、虎鉄はどうにか完食した。
「食べてくれて、本当に助かったわ!」
「先生や生徒に言っても誰も食べてくれないんですよ!」
「……そりゃそうだろ、こんなの……うぅ……。」
「あらぁ?なにか言ったかしら?」
「いえ!なにも言ってません!」
「で、味はどうだったのかしら?」
「……そうだな、この世界から色の概念が無ければ問題はない。」
「なにか引っ掛かる言い方をされた気がするけれど、聞かなかったことにしておいてあげるわ。」
「じゃあ生徒会活動始めますか?」
「そうね、そうしましょう。」

「で、なにをするんだ?どうせ今日もやることないだろ?ほぼ毎回集まるだけで何もしねぇで
終わってるし。」
「今日はやることあるわよ。」
「そうです、あるんです。」
「生徒指導の先生からの提案で、無遅刻無欠席の生徒に対する食堂5%オフをやめるべきとのことよ。」
「これについて、今日は議論です。」
「えぇ!?マジでか!?なんで!?」
「2014年4月から消費税が上がるからよ。」
「そんな理由!?」

「まぁ、もうひとつ、間接的な理由もあるけどね。」
「なんだ?」
「全員が全員無遅刻無欠席を達成しているので全校生徒全員が5%オフになっているので、財政的にも
きついそうなんです。」
「どう考えてもこれが直接的な理由だろうが!!」

「ということで多数決をとるけれど、この待遇廃止に反対の人は、死になさい。」
「……反対できねぇじゃねぇか!」
「じゃあ3対0で可決ということで、本日の生徒会、これにて終了よ。」
「何にも議論してねぇぇぇ!!」

第4話へ続く

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