しゅでん日記!―本線― 第5話「青!」 【7月の金曜日】

昼食を取るために駅前に新しく出来たバーガー店へやってきた大河、神山、永沢、虎鉄。
「あたしはどれ頼もうかなぁ〜?」
「僕もどうしようかな……道馬はなににする?」
「あぁ俺は100円のバーガーだけでいいわ、金ねぇし。」
「私も100円のバーガーにするわ。」
「紗耶香、めずらしいね。こういうバーガー店に来たらいつもビッグバーガーLLセットにナゲットと
ジュワットチキンとアップルパイとクッキー入りアイスクリームをつけるぐらいしてたくさん食べてるのに。」
「最近色々な所に行ったから、あまりお金は使えないのよ。給料日目前だし。」
「さやっち、いつもそんなに食べてるの!?
よし!じゃあ今日は代わりにあたしがたくさん食べよう!」
「代わりってなに!?」
「で、つっこんでいる大河は決まったのかしら?」
「あ、えっと僕は、フィッシュバーガーセットにしようかな。」
「大河=タイガー=ネコ科だけに魚好きなの!?」
「そういうわけじゃないから!!」

各自注文し、商品を受け取り、2階にある席に着いた大河御一行。
そして食べ始めたが、一人、青ざめている人物がいた。
「あれ?どうしたの道馬?」
「あ!ホントだ!青いよ!?怖い思いでもした!?」
「この色合いは青20号かしら……。」
「い、いや、俺が青ざめるよりもっと青いものがここにあるんだが……。」
そういって虎鉄は自分のバーガーの包み紙を取り去り、3人に見せた。
「青!!なんでこんな青いの!?バーガーだよね!?これ!?」
「きっとあれだよぉ〜!!ブルーハワイ風味バーガー!」
「このバーガーは青24号かしら……。」
「あぁ!もう!ちょっくら店員に文句言ってくるわ!!」
虎鉄は怒りながら1階へと降りて行った。

そして5分後、怒り気味ながらも納得した感じで帰ってきた虎鉄。
「道馬、結局どうしたの?」
「代金返金で好きなバーガーを注文していいっつうから、4分の1バーガーを注文してやったよぉ。
で、今作ってる最中だとさ。」
そこから5分後、店員が4分の1バーガーを持ってきた。
そして虎鉄がバーガーの箱を開けると、青々しい物が。
「あぁ悪ぃ……もういっぺん行ってくるわ。」
「う、うん……。」
「驚きの青さ!」
「このバーガーパティは青2、いや3号かしら……。」

そして10分後、納得している感じも無く機嫌悪そうに帰ってきた虎鉄。
「えっと、今度はどうしたの……?」
「代金返金プラス次回使えるクーポン貰って、今度は好きなメニュー注文していいっつうから、
バーガーはやめてフライドポテトにしてやったよ。」
そこから10分後、店員がフライドポテトを持ってきた。
今度は誰がどう見ても一般的なフライドポテトの色だった。
「これは黄4号……いや、黄……。」
「良かったね道馬、こんどこそまともに来て。」
「おうよ、もしこれでポテトまで青かったらもうこの店の信用をなくしてるところだったぜ!」
「まだ現時点では信用してるんだ……。」
「虎鉄君!1本ちょーだい!!」
そういって永沢がフライドポテトを引っ張りだすと、中の方は青だった。
「なんと!?」
「なんかもうリトマス紙みたいだね……。」
「これはきっと青22号ね。」
虎鉄は商品を持ち、無言で下に降りて行った。

そして20分後、怒りをあらわに戻ってきた虎鉄。
「えっと……今度は……?」
「代金倍返しプラス1年間何度でも使える10%オフ券と、今度は好きなメニューを2点注文して
いいっつうから、ナゲットとアップルパイにしてやったよ。」
「へぇ……そうなんだ……(注文しないで帰るっていう選択肢は無いのかな……。)」
そこから20分後、店員がナゲットとアップルパイを持ってきた。
ここで、虎鉄は持ってきた店員を問い詰めた。
「なぁおい、今度は大丈夫なんだろうな?」
「はい、もちろんです。今すぐ開けてご確認いただいても大丈夫ですよ。」
「あっそう、んじゃ今すぐ開けてやるから覚悟しておけよ。」
そう言って、虎鉄はナゲットの箱を開け、アップルパイも箱から取り出した。
すると、今度は本当に食べ物本来の色だった。
重なって下になってるナゲットを見ても普通色だし、裏返してみても普通色。
ナゲットソースを開けてみるが、これもマスタードの黄色だった。
アップルパイもちぎって中を見てみたものの、やはりこちらも普通色だった。
「ありがとうよぉ!店員!疑った俺が悪かったぜ!」
そう言って虎鉄がナゲットをかじると、ぶちっと中に入っていた青いカプセルから青い液体が飛び出て、虎鉄の顔に付着した。
「青15号ね、きっと。」

「……信じた俺が馬鹿だった!!
もうてめぇら全員まとめて訴えてやる!ジャッジメントですのよ!!
あぁ店の名前なんだったけか!?教えろ!」
すると店員がこう答えた。
「マクドナルトウです。」
「え?い、いま、なんて?」
「マクド“ナルトウ”です。」
「……あ、あれれぇ?なんか聞き覚えのある名前が入ってるなぁ〜……。
外食産業に手を出すとか言ってたがもう出したのか!!
ちょっと俺、学校行ってくっから!!」
そして、虎鉄は猛ダッシュで学校へと向かって行った。

「……ぼ、僕達も行こうか?」
「そ、そうだね!大川君!」
「他にどんな色があるのか気になるところだけど、そうしましょう。」
3人は店を後にし、バイトの為、駅へ行き制服へと着替えた。
3人がちょうど休憩室に集まったところに白岡駅長がやってきた。
「お疲れ様です。皆さん今日は早いですね。」
「はい、僕達明日から夏休みなので、今日は早く終わったんです。」
「そうだったのですか。
そういえば皆さん、どこかいつもと違う気がするのですが、私の気のせいでしょうか?」
「あたしたち、どっか変わりました!?変わってないよね!?大川君!」
「僕も、特に変わった気は……。」
大河がそう言いながら永沢を見た時、大河にも一つの疑問が頭に浮かんだ。
「あれ?そういえば永沢さんの目って青だったっけ?」
「青は青でもグリーンだよ!!
って!!君こそ青だったかい!?大川君!!」
「うそ!?青になってるの!?僕は赤なんだけど!!」
「あーっ!さやっちの目も青くなってる!!」
「私、もとから青よ。」

「確かに言われてみれば、神山さん以外の目の色が青になりましたね。
そういえば、みなさんの髪の色はそのような色でしたか?」
そう言われた3人が自分の髪を見てみると、青だった。
「あーっ!あたしの髪が青ってる!さやっちの髪も青ってる!!大川君の髪も青ってる!!!」
「僕は元から青だよ!!」

「この青々しい現象、どう考えてもさっきのバーガー屋のせいだよね……。」
「じゃあみんなでクレムる!?」
「いや、クレーム言ったら言ったでさらに青々しいことになるかもしれないから、やめておいた方が
無難かな。」
「じゃあ、青何号を使ってるのか聞きに行くのかしら?」
「行かないよ!!っていうか青何号とかってなに!!」

「さて、どうしようか。目の色の方はこう言ったら語弊があるけど小さい箇所の違いだからいいとして、
青髪キャラ3人というのは、画的に微妙だし。」
「いいじゃない、全員青信号で。高速進行以上に早く走れるわよ。」
「何がいいのか分からないよ!!」
「いいじゃん!これこそクールビズだよ!」
「こんなんで温暖化が止まるなら環境省職員全員こなた化しちゃうから!」
「あ!確かに全員が青髪になっちゃったら“青髪はステータスだ!希少価値だ!”って
言えなくなっちゃうもんね!!」
「知らないよ!そんな格言!」
「そういえば皆さん、仕事の時間は大丈夫ですか?」
そして、3人は各々自分の持ち場へと向かった。

仕事が終わり、着替えた3人は再び休憩室に集まり、青々解決会議を開催した。
「さて、あの店に関係しているであろう成東さんに聞けば、どうすればいいのか分かると思うけど、
素直に対応してくれるとは思えないから、なにか解決策を考えようよ。」
「はい!髪については一度坊主になればいいと思うんだよ!あたしは!」
「メイン女子キャラが全員坊主頭ってどんな作品だよ!!」
「髪は読者の脳内補完でいいんじゃないかしら?」
「よくないから!」
「いいじゃん!!だって小説なんだからキャラの絵も本編中に出てこないんだし!!」
「そういう問題でもないよ!!
とにかく、もっと現実的な解決策を!」

「じゃあカツラを被ろう!!」
そう言って永沢がかばんから取り出したカツラは青かった。
「青っ!なんの解決にもなってないんだけど!っていうかなんで持ってんの!!」
「いや〜もし青髪にならざるを得ない状況が来たときの為に持っておこうかなぁ〜ってね!!」
「どんな状況!?」

「カツラはその場しのぎにしかならないから、他の案を考えよう。」
「それなら、染髪したらいいんじゃないかしら?」
神山がそう提案すると、永沢がかばんの中からヘアカラーリング剤を取りだした、しかも青の。
「青いよ!なんで青いのばっか持ってるの!!」
「いや〜もし青髪にならざるを得ない状況が来たときの為に持っておこうかなぁ〜ってね!!」
「だからどんな状況なの!!」

突然現れた白岡駅長が、話に加わってきた。
「皆さん、その青い髪を元の色に戻そうとしているそうですが、染髪してみてはいかがでしょう?」
「もうその案出てます!!」
そして、白岡駅長は立ち去った。

「もうさぁ〜元の色に戻す方法を探すより、青髪でしかできないことをやろうよ!」
「青髪でしかできないことってなに!!」
「青髪キャラのモノマネだよ!!」
「じゃあ一体誰のモノマネやるの!?」
「え!?……えーっとねぇ〜……………………ぼ、ぼくドラえ、」
「髪無いよ!!」

「じゃあ、私もモノマネしてみようかしら。」
「え!?紗耶香、モノマネなんか出来るの!?」
「見たい見たい!!」
すると、神山は照れることも無く落ち着いた様子でモノマネをした。
「髪無いよ。」
「…………僕のモノマネ!?っていうかテンション、言い方、その他諸々一切真似る気ゼロ
なんだけど!!」

「もう話し合ったところで解決しそうもないし、とりあえず今日はこのままにしておこうか……。」
「よし!そうしよう!!話し合いが終わったところで、ぱぁ〜っと!打ち上げしよう!!」
「なにも解決してないのに打ち上げって!!」
「さぁさぁ!みんなでこれを食べようじゃないか!!」
そう言って永沢がテーブルに置いたのはサバの味噌煮缶詰だった。
「なぜにサバ缶!?」
「いやぁ〜青魚だけにあたしたちも青いからぴったりかなぁ〜ってね!」

そして、ちょうど3つあったので一人一缶ずつ食べることになった。
神山と永沢は難なく缶の蓋をあけることができたが、大河の缶だけ固くてなかなか開けることが
できない。
「大川君!気合いだよ気合い!!」
「手を切らないよう気をつけなさいよ、大河。」
「うん、分かってるよ。」
何度か力いっぱい引っ張っていたら、ついに開いた。
しかし、勢い余って缶のフチに指を触れてしまい、切ってしまった。
そして、怪我した本人と切ったところを心配そうに見た永沢と神山は、声を失った。
なぜなら、傷口から出ていた血の色は赤ではなく……。

第6話へ続く

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